夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。


「じゃあ、私、先に出るね!」



「いってらっしゃい」



ユメカは

こっちに帰って来て

バイトを始めた



オレは3年生

就職活動が始まった



「あ、雨降ってる
この赤い傘借りてもいい?」



「うん、いいよ
気を付けてね」



「うん、ウサギもね!」



慌ただしくユメカが出て行った



今日はいってきますのキスしなかったな…

そんなことを考えながらネクタイを締めた



オレもそろそろ出るかな…



時計を見て

玄関に向かったら

ドアが勢いよく開いた



「ウサギ!」



ユメカが戻って来た



「なに?
なんか、忘れ物?」



傘をさしたまま

ユメカが思いきり抱きついてきた



水滴がスーツにかかった



「…なに?
なんか、あった?」



「コレ…」



「あー…気付いた?」



赤い傘にオレが書いた文字



『いつか結婚しようね』



ユメカが海外に行ってる間に書いたんだった



「こんな早く気付くとは思わなかった」



ユメカがいない1年

ユメカを待ちきれなくて

ひとりで同棲の準備をしたり

勝手に結婚まで考えてた



先走りすぎたかな…



「ふつつか者ですが
よろしくお願いします!」



「え…もぉ返事もらえるの?」



「うん
また夢叶っちゃった!」



赤い傘の中で

ユメカは嬉しそうに笑った



かわいい



「あ!ウサギのスーツ濡れちゃった
ごめん!」



「オレは着替えれば大丈夫だけど
ユメカ、バイト間に合うの?」



「あ!
いってきまーす」



夢叶ってよかったね

ユメカ



精一杯幸せにするよ