夢みる少女は、寂しがり詐欺師に騙されない。


家まで涙を我慢した



ずっと水の中にいるみたいで

苦しかった



「ただいま」



「おかえり
また緑川くんのところ行ってたのね」



「うん
ご飯食べてきたからいらないよ」



「ホント仲いいのね」



ママの顔は見れなかった



急いで部屋に向かって

ドアを閉めた途端

涙が溢れた



ホント仲いいのね



ママの最後のひとことが

みんなを騙してる気がして

辛かった



ウサギを好きじゃないフリをしてるのに

ウサギが好きで



ウサギをふったクセに

またウサギのアパートなんか行って

ご飯作ってる



好きな人がいるとか言って

それはウサギで



私だけが好きなだけでいいとか

ウサギの気持ち無視して



自分勝手で

性格悪い



ウサギの告白は同情かな…なんて



勇気を出して

伝えてくれたかもしれない気持ちを

そんなふうに思ったりしてた



私は

ウサギを好きな気持ちを

伝える勇気もないのに



ヒドイね





最低だね





そんな私は

人を好きになる資格なんてない



『オマエのこと好き』



傘の文字を思い出した



男の人の文字で

控えめに書かれた文字



ウサギは

どんな気持ちで

あの文字を書いたのかな?



考えたら

胸が痛かった



溢れる涙に

溺れるくらい

息ができなくて



ここが地獄かな…って思うくらい

苦しかった