黒い傘をさして
駅に向かった
冷たい雨が降ってた
傘が重く感じる
さっきは
ウサギとふたりで持ってたからかな
手が冷たい
あ、コートも忘れてきちゃった
せっかくウサギが買ってくれたのに…
もしかして
ウサギ
わざと渡さなかった?
ウサギは
きっと
忘れてなかったはず
ただ
「気を付けて…」って
玄関まで送ってくれた
きっと
私が好きな人とうまくいくように
送り出してくれた
私はウサギをふったのに
私の好きな人の話
どんな気持ちで聞いてたんだろう
まぁ
ウサギのことなんだけど
ウサギはそれを知らない
ウサギからの告白は
同情だったかもしれない
そう思ったりしてたけど
ウサギ
泣いたって言ってた
ホントに?
『オマエは呪われる』
傘に書かれた文字を見上げた
男の人っぽい角張ったウサギの字
好きだな
いい言葉でもないのに
ずっと見てたくなる
書いてる時
隣でウサギを見てた
それでいんだ
ウサギの隣に
ずっといたい
ウサギの隣で
笑ってたい
ん?
傘に
もうひとつ
文字が書かれてた
小さくて気付かなかった
立ち止まって
傘を見上げた
『オマエのこと好き』
一瞬
息が止まった
誰が書いたの?
ウサギが書いたの?
ウサギの字
いつ
書いたの?
いつから
書かれてた?
オマエって?
ウサギに言われたら
嬉しい言葉なのに
海でも言ってくれたのに
私は断わった
同情だったのかな…なんて
今でも疑ってた
ウサギ
ごめん
私だけが好きなままでいいとか
ズルいね
私
すごく残酷なことしてるかも
私



