ご飯をよそって
ウサギと一緒に食べた
「考えごとって、何考えてたの?」
「ん…ちょっとね…」
「好きな男のこと?」
ハズレでもなくて
飲み込もうとしたキャベツが飲み込めなかった
「そーかも…」
「そーなら
オレのところ来てる場合じゃなかったな」
「そーかな…」
「そーだろ
あ、オレが無理矢理連れて来たんだった
食べたらすぐ駅まで送るよ」
「ひとりで帰るからいいよ
ウサギ、忙しいでしょ
あの傘、借りてくね」
「会ったりしてるの?」
「え…?」
「好きな男と会ったりしてるの?」
会ってるよ
今
「うん…」
「いい感じなわけ?」
「どーかな…」
「オマエ
告白されるように努力したりしてんの?
…
もしくは
自分から告白したりしないの?」
「努力…か…
…
たぶん…しないかな…
私が好きなだけでいいの」
「オマエねぇ…
…
オマエ
カレシ作る気も
夢叶える気も
最初からないだろ」
ウサギは
全部わかってる
カレシ作る気も
同棲する気も
ひとり暮らしする気も
ないこと
夢は
ホントに夢のまま
いつか忘れて
消えていくのかもしれない
夢が
消える前に
忘れる前に
私がいなくなるかもしれない
人はいつか死ぬこと
明日はないかもしれないこと
全部
ウサギに言われて気付いた
わかってた事なのに
わかりたくなくて
わからないふりをしてたのかもしれない
明日は
ウサギに
もぉ会えないかもしれない
「オマエの夢のために
ひとりの男が犠牲になってんだからな
…
また諦めたとか言うなよ!
…
オレの涙、ムダにすんな!」
ウサギ
泣いたの?
私のせいで?
「ユメカって名前
夢を叶えるって書くんだろ
…
親の期待、裏切るなよ」
ホントに
そーだね
何も言い返せなかった
ウサギ
あのね…
私
ウサギが好きなの
私が好きなのは
ウサギなの
ウサギは全部わかってるけど
それは
わからないよね?
気付いてないよね?
「諦めたく、ない…」
私だって
私だって諦めたくないよ
「じゃあ、がんばれば…
…
絶対、諦めんなよ
…
夢、叶うといいな」
なんで
なんで
ウサギは
こんな時も
優しんだろう



