あの春を、もう一度。

先輩は、あまのじゃくな私とは正反対に、自分の気持ちを隠すのが上手くない。

何をしてもすぐ顔に出てしまう。

きっと、平気なんかじゃない。頑張って平気なふりをしているだけなんだ。

最後まで、ちゃんと“私の先輩”であろうとしてくれている。

キュッと胸が苦しくなる。

…ホント、後輩思いなんですから。

この2年間、誰よりも近くで先輩を見つめ続けたのは私。この常識が通じない、支離滅裂な先輩の1番の理解者は私。

だからこそ、私にしか言えないことがある。

「青井先輩っ!」

小さくなった背中に、お腹の底から湧き出るありったけをぶつける。

驚いたように振り返った先輩に、間違いなく届くよう、両手を口元に当てて叫ぶ。

「先輩はっ、馬鹿で、不真面目で、締切とか1回も守ったことがなくてっ!すっごっく手のかかる先輩でしたーーー!!!」
「わざわざ叫ぶなよっ!恥ずかしい!!」
「でもっ私!」

すうっと大きく息を吸う。