甘いセロリの王子様

 



 放課後。校舎三階、音楽準備室の隣。ここが、私たち合唱部の部室になっている。

 部員は合わせて15人ほどだ。人数は少ないけれど、みんなすごく真剣に歌と向き合ってくれる。部長として私はそれが、すごくうれしい。



「じゃあ、今日から始まった文化祭でやる3曲目、明日も引き続き音取りして明後日にはパート練に入れるようにしましょう」



 部活の最後に連絡をして、終わりのあいさつをした。



 合唱部の活動は月曜から木曜の毎週4日間。

 夏休みの活動がほとんどない中、10月初めにある文化祭に向けて3曲仕上げなければならない。

 引退するのは、まだまだ先ということだ。



「あの、先輩」



 みんながぞろぞろと帰っていくところで、1人の後輩が私に話しかけてきた。

 耳のあたりの位置でふわふわのサイドテールを結っている、可愛らしい雰囲気の女の子。

 私の一つ下、中学2年生の結城(ゆうき)さくらちゃんだった。



「どうしたの?」

「これ、日誌です。次、先輩の番なので」

「ああ、そうだっけ。ありがとう」



 私は、大きめな手帳サイズのノートを受け取った。

 うちの部では、1年生から順番に活動記録の日誌を書くことになっている。

 合唱部の3年生は私しかいないから、2年のさくらちゃんの次に書くこととなっていた。