甘いセロリの王子様


 び、びっくりした……朝だから誰もいないとはいえここ学校の廊下だから、土下座はまずいんじゃないかなあ……。


 「2組って数学何時間目?」

 「さ、3時間目っ!」

 「私で良ければ貸すね。たしか1組の数学は午後だから、お昼休みに返してくれればいいよ。今、持ってくるね」

 「私もついていきます!!」


 もう一度教室へ行って、かばんから数学の教科書を取り出す。


 「はい、どうぞ」

 「あ、ありがとう……!! でも、本当にいいの? 予習とかに使ったりしない?」


 今度は心配そうな顔で尋ねてくる麻里花ちゃん。

 さっきまで泣きそうな顔をしていたのに……表情がころころ変わってとってもかわいい。


 「数学は昨日の夜やったから大丈夫だよ。気にしないで~」

 「ほんと? では、お言葉に甘えて借りさせていただきます! ありがとう~っ!!」

 「うん、じゃあね~」


 今度なにかお礼させて! と元気な声でそう言った麻里花ちゃんは、教室を出ていった。


 誰かの役に立ったり、頼られたりするのって、すごくうれしい。


 私は空になった教室を一度だけ振り返った。

 まるでそこへ、誰もいないことを確かめるように。