甘いセロリの王子様




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 その日の放課後、部活終わり。

 私は顧問の先生から部室へ残るように言われていたから、掃除をしながら待っていると。



「ごめんなさい、遅くなってしまって」



 一度職員室に行っていた先生が、慌てた様子で戻ってきた。

 先生は、30代半ばの女性教師。中1の音楽を教えているため、中2以上の部員は合唱部でしか関わりがない。

 だけど、みんなへ真摯に寄り添ってくれる優しくて素敵な先生だ。



「南山さんと、少しだけ今後についてのお話をしたくてね」

「今後について、ですか?」



 それは、合唱部の今後についての話だろうか。

 たしかに人数が少ないから、来年5~6人程度の人数を確保しないと存続は厳しいかもしれない。



「合唱部じゃなくて、南山さんの、ね」

「え、私のですか?」



 予想外の言葉に、私は少しだけ戸惑う。

 先生は一息ついた後、話し始めた。



「学校のルールで文化祭での出し物がある部活はそれまでは退部できない……。ただ、これから文化祭に向けての準備が忙しくなる中で、毎回の活動に参加するとなると、受験との両立はかなり大変になると思ってね。それに、合唱部の3年生は南山さんだけだし。もしよければ、練習への参加日数を少し減らして、その分を勉強に充てる、という形も考えられるわ。その間の部長の仕事は、次期部長のさくらさんに任せることもできる。もちろん、どうするかは南山さんが決めていいのよ」