「……は？」


カヤの小さな驚く声が、聞こえた気がした。


大きな悲鳴に混じって。


カヤを見上げると、驚いて固まっている様子。


「どうしたの？」


な、なんでこんなにカヤは驚いてるの？


「……や、なんでも。帰るぞ」


カヤは少し焦った色を目に浮かべて、くるっと踵を返した。


私の腕をつかんだまま、どんどん先へ歩いていく。


カヤの歩く歩幅は、私には大きすぎて小走りになる。


「ちょっと通してください！」


後ろから誰かの叫ぶ声。


そりゃ、こんなところにたくさん人が群がってたら通らなくなるよね。


後ろを向く暇もなく、カヤについていくので精一杯だった。


「ちょっと、椿！」


椿……？


後ろから誰かを呼ぶ声。


迷子かな？


後ろを振り返ろうとするけど、やはり歩くのが速すぎて転びそうになる。


「ちょ、カヤ……っ！」