「お前彼氏いんの?コイツかよ」


元カレがカヤの前に立ちはだかる。


何で張り合ってるの。


「……だからなんだよ」


お腹の底から出したような低い声が、カヤから出る。


聞いたこともない、うなるような声。


反射的にビクッと肩が跳ねる。


「とりあえず離せよ」


「はぁー?どの立場が言ってんだよ」


少しひるんだ元カレ。


でもおかまいなしに言い返す。


「ひゃっ」


カヤは元カレを睨んだあと、私の腰を引き寄せた。


必然的に、カヤに抱きしめられる形になる。


「っ!」


顔に熱が集まる。


密着度が高くて、カヤの体温と心臓の音が聞こえる。


「触んな、ばぁーか」


カヤはマスクを顎に下げて舌を出した。


べーっと効果音がつきそうなくらいだ。


「っくそ、お前なんか誰がまともに相手にするかよ、きっしょ」