月くんは、短い返事をして静かにつぶやいた。


「ここら辺は危ないから、夜12時以降は絶
 対に出歩くなっス」


敬語とタメ語がごちゃごちゃになりながらも、月くんは真剣に、私の目を見て言った。


「あ……わかった」


その目が真剣すぎて、反射的にうなずいた。


「っス」


そして月くんは、もと来た道を戻って行った。


え……。


たしか月くん、家はあっちって……。


きっと、私を送り届けるためにこっちに来たの……?


「月くん!ありがとう!」


今、夜中だと言うことも忘れて叫ぶ。


とにかく、ありがとうって言いたかった。


月くんは、立ち止まって……でも振り返らずにまた歩き出した。


バイト……がんばろ。


久々に、そう思った。