「カヤ……」


「そ」


「……ひとつ、聞いてもいいですか」


「……」


彼は、無言だった。


なにを聞かれるか、想像つくのだろうか。

聞かれたくないことでもあるのだろうか。

どうしても気になる私は、聞いてみることにした。


「どうして、あんなところに……?」


……カヤは、やっぱり、とでも言うようにため息混じりに笑った。


「それ、気になんの?」


気になってるから聞いてるんじゃん、ムッとしてカヤを睨む。


「……逃げてきた」


「は……?」


数秒の沈黙の後、カヤは突然口を開いた。


「逃げーーーーー……」

「もういいだろ、んな話。つか風呂貸しても
 らっていい?」


聞き返す前に、カヤは次の話題へと話をそらした。


そんなあからさまにそらさなくてもと思った。