「頭を上げなさい」



黙って頭を上げるカヤ、だけど、その目はまだ、ちゃんと真綾さんを捉えていない。



まだ、目を合わせるのが怖い、そう言っているようだった。



「……あなたが出て行った時ね、私、正直捨てられたんだと思ったの。……電話しても繋がらない、トークアプリの登録は全て消されていたし」



「っ……ごめ___……」



「謝る必要はないわ。 それからね、通帳のお金がいつのまにかすごい量になっていることを知ったの」



真綾さんは、優しい声で、でもどこか怒っているような声で話を続ける。



「それからも、たくさん変わったことはあった。借金も全て返済されていたし、玄関に真新しい生活用品が揃えられていたこともあったわ」



きっとそれはカヤだと言うことも、真綾さんは気づいたんだ。



「___だからね、カヤ。あなたは何も謝る必要なんてないの。あなた自身は、私たちを捨てたって思ってるのかもしれないけどね。それでも___……」



そこまで言うと、真綾さんは一旦言葉を止めた。



まるで、カヤと目を合わせるのを待っているみたいに。



「___あなたが私たちを大切に思っているのは、痛いほど伝わってきたわ」