黙ってひたすら家を出て行こうとする月くんに謝り倒していると、月くんがちょうど玄関で立ち止まった。



後ろでちょこまか動いていた私は、月くんが急に止まった衝動で思いっきり鼻を打つ。



「いっ……」



月くんから、ギギギ……と錆びた機械のような音が聞こえるくらい、気まずそうな顔をして私をふりかえった。



「お……俺今……すっげぇやべぇこと言ってましたよね……」



やってしまった……と言わんばかりの表情で真っ青になる月くんに少し安堵を覚えた。



「す……すいません……!上から目線でえぐいこと言っちまって……!」



そのまま土下座してしまいそうな勢いで私に頭を下げる。



「俺……なんか兄貴にイラつきまくってやべぇこと___……」



あわあわとし出す月くん。



とにかくなだめようと近づいた時だった。



「……ただいま、」



ガラガラ……と、玄関の引き戸が開いたのは___……。