「カヤ、」



カヤは、いつもの優しい目で私を見つめる。



その目は、少し悲しそうで。



どうしてそんなに悲しそうな目をしてるのーー……?



「心配したよ?」



まるで今の私たちの距離を埋めるかのようにカヤのそばまで歩み寄る。



「……寝てなかっただけだって」



カヤはふっと笑うと私の頬に静かにキスをした。



「でも、」



「一緒の時間取れなくてごめんな。……もっとがんばってくるみ喜ばせて。くるみと一緒にたくさんの時間過ごしたかったんだ」



そこまで言うと、カヤは矛盾だらけじゃん、と切なそうに笑う。



その目には少し涙の膜がかかっていて。



それほど自分の気持ちと戦ってるんだろうなと思った。



私との時間をたくさん作りたい、でも仕事をがんばって私を喜ばせたい、そのためには私との時間が必要だ。



じゃあどうすればいいんだ、なんてカヤは思っているだろう。



世の中は矛盾だらけだ。



その矛盾が人を苦しめることだってあるし、幸せにすることだってできる。