「でも由榴、あんたのことはずっと苦手だし」



由榴さんが、突然私を指差しながら目の前まで来る。



少し驚きながらも由榴さんを見ると、由榴さんは口を尖らせて私を見ていた。



「由榴にど正論言ってきたもん。…………よ」



「っえ、?」



ボソッと何かを言ったかと思えば、聞き取れなくて首を傾げる。



「2回目言わせんじゃないわよ。……おかげさまで前向けたって言ってんの!」




べっと舌を出す由榴さん。



そんなことを言う柄じゃない由榴さんに少し驚きながらも、自分の気持ちが緩むのを感じる。



「いーえ、とんでもないです」



「何笑ってんのよ。……椿くん、お大事に。あと……お幸せに」



由榴さんは、少し切なそうな表情をして、でもスッキリしたような表情をして病室を出て行った。



「……」



「……」



少し気まずい雰囲気が病室を包む。



由榴さんの存在をはっきりさせてなかったことが私を怒らせたと思ったのだろうか、いつになくソワソワしているカヤの方を向く。