「椿ってさ、浮気とかそういうのすると思う?」



仙道さんが壁に背を預けた状態で話し出す。



目線は下にさがっていて。



その瞳は酷く寂しげに揺れていた。



「……しない、と思います。でもーー……」



「椿本人から由榴との関係聞いたの?」



仙道さんがまっすぐに、でも優しく問いかける。



「聞いてない、です」



でも……でもっ!



カヤは……そのことを否定しなかった……。



無意識に、カヤからもらったブレスレットをつけた腕を握る。



「今日はさ、撮影でさ。椿は朝から浮かれてたよ。……1人でそのブレスレット見てニヤついてるしさ」



仙道さんが私の腕を取った。



優しくブレスレットをなぞる。



「だからさ…… ちゃんと椿と向き合おう?あいつも不器用なりにくるみちゃんと向き合おうとしてるんだよ。……消し去りたい過去があってもあいつはそれを一生忘れられないんだ」



そこまで言って仙道さんは黙った。



消し去りたい過去……?



「それってーー……」



「その過去を忘れられなくても、あいつを支えることができるのはくるみちゃんだけなんだから……今の椿とくるみちゃんの間に由榴は関係ない」



聞き返そうとした私の言葉を遮る。



ね、そう言って仙道さんは笑った。



「……はい」



何も言うことがなかった……。



仙道さんが言うことは全て正しくて、私を冷静に戻してくれる。