「ちょっ、くるみちゃん!」



腕をつかまれる感覚。



少し期待した。



カヤが追いかけてきてくれたのかなって。



さっきのは嘘だよって抱きしめてくれるのかなって。



そんなところまでカヤを思っている自分が恥ずかしくて。



私の腕をつかむ仙道さんの手を振り払った。



「くるみちゃん、大丈夫だから」



「何が……?何が大丈夫なんですか?仙道さんはこのこと知ってたんですよね!?」



先ほどから溢れる涙をさらに溢れさせる。



そっか、さっき楽屋で仙道さんが私を引き返させたのは由榴さんがいたからなんだよね。



仙道さんは全部知ってて……!



知ってて、何も知らない私を見ていたの……?



「もうどうでもいいんです……っ!全部……全部……!」



「くるみちゃん!落ち着いてよ!」



非常階段。



気づけばそんなところまで来ていた。



追いかけてくれたのはカヤじゃなくて仙道さん。



別に……もうどうでもいいもん。



「くるみちゃん……僕と話そっか」



だんだんと頭が冷えてくることで冷静になる。