まだまだ知らないことなんてたくさんあるけどね。



「また女と遊んでなきゃいいけど」



ボソッと月くんがつぶやいたのが聞こえた。



きっと私に聞こえないようなボリュームで言ったのだろう。



……でも私の耳に入ってしまったのだ。



あぁ、これ聞かなきゃよかった。



またネガティブな方向へ思考が進んでいく。



手を止めた私に月くんがハッと我に帰ったような気がした。



「その……大咲先輩は気にしなくていいっスから……今は兄貴だけ見てやってください」



苦笑いすることしかできなかった。



そんなこと知って、気にならないわけないよ。



「そうだね」と、うなずくしかできない。



結局その日、カヤが私の作ったごはんをあたたかいまま食べることはなかったーー……。