「中3の頃……スカウトされてさ。……それではっきりしたよ、もう俺1人で生きていこうって」



中3の冬。



俺はスカウトを受けた。



街を歩いていたら突然知らないオッサン。



「君、ちょっといいかな〜?」



気持ち悪りぃ、そう思いながら軽く受け流そうとしたんだ。



でもそのオッサンから出てきた言葉は、俺がずっと待ち侘びてたもの。



"モデル、興味ない?"



そこからだ、俺の人生が変わったのはーー……。



「母さんだって働きまくってる。養成所行くのはもっと金かかるだろ?だから出てったんだよ……俺は邪魔だから」



「……俺は邪魔なんて思ってねぇ」



「お前の気持ちは関係ねーよ、母さんがどれだけ大変か考えてみろ」



「……母さんだって思ってねぇよ!」



「お前にはわかんねーってば」



声を荒げる月をなだめようと笑みをこぼす。



……笑えない。



そんな気持ちでいっぱいだった今まで。



楽しくない、嬉しくもない。



俳優になる夢を叶えたって、ふとした時に出てくるのはーー……。


何も言わずに残した母さんと月だけだった。



そんな自分の心の中を悟られまいと、笑顔を顔に貼り付けていつも乗り越えてきた。