傘を差して、向き合っている2人。


耳をすませば会話がギリギリ聞こえるくらいだ。


月くんとカヤって、知り合いだっけ……?


いや、初めましてのはずだよね。


じゃあ、なんで……。


こんなところで2人が……会ってるの……?


反射的に電柱の影に身を隠して息をひそめる。


どくん、どくんーーーーー


自分の心臓の音が、はやく、大きくなっていくーーーーー。


突然聞こえた月くんの言葉は、私の心臓を止めるかのような衝撃だった。




「なんで?なんでどっか行ったんだよ、


 ーーーーー兄貴」


ーーーーー目の前が、真っ黒になった。


どくどくと、体中が沸騰するようにあつくなる。


兄貴……?


カヤが……月くんの、お兄ちゃん……。


傘で2人の表情は見えないけど、とても重苦しい雰囲気が漂っているのはわかった。