彼女がすくっと立ち上がり、

座ってる僕を見下ろして

「私、一緒にいると
役に立つのにっ!」って
言った。


僕は顔を伏せてシッシと
手を振ってしまう・・・

コツコツ・・・
ピンヒールの遠ざかる音。

(こんな泣き顔なんて
 見せたくないよ・・・。

 男なのになさけない・・・。)

彼女の足音がしなくなった。


トン・・・

ドキッ!!
僕の背中に温かいものが・・・

彼女の背中だった。
2人で背中合わせになっている。

『・・・・・。』
ソ~ッと体が動かないように
首だけを動かし、横を
向こうとすると・・・

彼女の足元にピンヒールが
コロンと転がっていて・・・

彼女は裸足の足で
背中を丸めて
コンクリートの地面を
ペタペタさせていた。

彼女は何も言わなかった・・・。



ただ

ずっとそこにいてくれた。


何も言わずに・・・

何も聞かずに・・・



その背中が温かくて・・・



僕はさらに泣いてしまった。