黒ヒョウに姿を変えた、そしてすぐにアズロは身体を起こし数歩後ろに下がってセドニーとの距離を取る。
怖がらせないように、これはアズロの配慮なのだとすぐに分かった。
申し訳ないと思いつつも、離れた方がよりしっかりとアズロの全身を見ることが出来たのも確かだ。
「…真っ黒だ。」
「黒ヒョウだからな。」
至極当然の事を口にしてしまった気がする。そのままの見た目を口にするのは侮辱になるかもしれない、それでもアズロは当然の様に答えてほんのり笑みを浮かべてくれた。金色の瞳はヒョウであっても人であっても変わらない。
「目の色は…やっぱり変わらないんだね。」
不思議だ、怖さなんて少しも感じない。
この距離感がそうさせているのだろうか、セドニーはそう思って立ち上がりアズロに近付いた。それに戸惑ったのはアズロの方だ。わずかに困惑の色を見せたアズロの目を見つめたままセドニーは近付いていく。
アズロの方は動かずにそのままそこでセドニーの行動を見守っていた。
アズロのすぐ目の前、目線を合わせるように膝を付けるとセドニーはしっかりとアズロをその目に映した。人の姿の時よりも顔が少し大きくなって、表情も引き締まっているように見える。
「怖くない…。気付かなかった、アズロってこんなにきれいなのね。」
ほのかに頬を赤く染めてセドニーが微笑めば、アズロの目が大きく開きそして彼もまた頬を緩めた。
「ああ、そうだ。綺麗だろう?」
声は人の時と変わらない、本当にアズロなのだと今更ながら感じて笑ってしまった。心が軽くなった気がするセドニーは、上目遣いでアズロの様子を気にしながらも手を伸ばす。
アズロの首回りは人の時とは違って太くて少し硬かった。でも凄く温かい。
「…セドニー?」
「怖くないよ。だからこれからはアズロの好きな姿でいてね。」
「ああ、そうする。」
「うん、そうして。あ、でも魔法屋では今までの方がいいかも。」
ふふっとセドニーの笑い声が聞こえてくる。アズロは右前足をセドニーの背中に回して優しく添えた。
爪を気にしているのだろうか、微かに触れるアズロの前足の感覚に笑い声はまた生まれた。
「少し…師匠の気持ちが分かった気がする。」
「何が?」
「黒ヒョウのアズロの姿…私だけの秘密にしていたいかも…。」
自分の中に生まれた独占欲は素直に受け止められる。これがアズロの本来の姿だとしても、他の魔女に見せるのは嫌だと思った。ついさっき好きな姿でいていいと告げたばかりなのに明らかに矛盾している。
「…そうか。」
そう答えたアズロの声は優しかった。セドニーの自分勝手な思いを怒らないでいてくれるようだ、嬉しくてアズロの首に回した腕に力が入る。
やがて窓から光が差し込み朝の訪れを感じさせた。
「…夜明けだ。」
セドニーの声に導かれてアズロも窓の外を見上げた。その時わずかに鼻の先がセドニーの鼻の先に触れる。
「あ、すまない。」
そう言って少し身を離したアズロを見送ってセドニーは自分の鼻先に触れた。
「なんか…私もヒョウになったみたいだね。」
さっきまでのキスとは違い、照れ臭そうに笑うセドニーは可愛いらしかった。そんなセドニーの反応に何かを感じたアズロは、少し考えたかと思うとさっき引いたばかりの身体を戻してまた口付けた。
この姿ではどうだろう、そんな試みがあったアズロは上目遣いでセドニーの様子を伺う。案の定赤くなったセドニーはなんとも言えない表情をしてアズロに目で訴えていた。
「あ、アズロって…実はちょっとエッチでしょ!」
精一杯の強がりでアズロに挑む、しかしその言葉の意味が分からないアズロはただ首を傾げただけだった。
「言葉の意味がよく分からないが…この姿の方が許してくれるという事は分かった。」
不敵に笑うその様子に反省の色は少しも混ざっていない事が分かる。さすがに拗ねたセドニーは部屋に戻ると宣言してぷりぷりしながらアズロの部屋を後にした。
怖がらせないように、これはアズロの配慮なのだとすぐに分かった。
申し訳ないと思いつつも、離れた方がよりしっかりとアズロの全身を見ることが出来たのも確かだ。
「…真っ黒だ。」
「黒ヒョウだからな。」
至極当然の事を口にしてしまった気がする。そのままの見た目を口にするのは侮辱になるかもしれない、それでもアズロは当然の様に答えてほんのり笑みを浮かべてくれた。金色の瞳はヒョウであっても人であっても変わらない。
「目の色は…やっぱり変わらないんだね。」
不思議だ、怖さなんて少しも感じない。
この距離感がそうさせているのだろうか、セドニーはそう思って立ち上がりアズロに近付いた。それに戸惑ったのはアズロの方だ。わずかに困惑の色を見せたアズロの目を見つめたままセドニーは近付いていく。
アズロの方は動かずにそのままそこでセドニーの行動を見守っていた。
アズロのすぐ目の前、目線を合わせるように膝を付けるとセドニーはしっかりとアズロをその目に映した。人の姿の時よりも顔が少し大きくなって、表情も引き締まっているように見える。
「怖くない…。気付かなかった、アズロってこんなにきれいなのね。」
ほのかに頬を赤く染めてセドニーが微笑めば、アズロの目が大きく開きそして彼もまた頬を緩めた。
「ああ、そうだ。綺麗だろう?」
声は人の時と変わらない、本当にアズロなのだと今更ながら感じて笑ってしまった。心が軽くなった気がするセドニーは、上目遣いでアズロの様子を気にしながらも手を伸ばす。
アズロの首回りは人の時とは違って太くて少し硬かった。でも凄く温かい。
「…セドニー?」
「怖くないよ。だからこれからはアズロの好きな姿でいてね。」
「ああ、そうする。」
「うん、そうして。あ、でも魔法屋では今までの方がいいかも。」
ふふっとセドニーの笑い声が聞こえてくる。アズロは右前足をセドニーの背中に回して優しく添えた。
爪を気にしているのだろうか、微かに触れるアズロの前足の感覚に笑い声はまた生まれた。
「少し…師匠の気持ちが分かった気がする。」
「何が?」
「黒ヒョウのアズロの姿…私だけの秘密にしていたいかも…。」
自分の中に生まれた独占欲は素直に受け止められる。これがアズロの本来の姿だとしても、他の魔女に見せるのは嫌だと思った。ついさっき好きな姿でいていいと告げたばかりなのに明らかに矛盾している。
「…そうか。」
そう答えたアズロの声は優しかった。セドニーの自分勝手な思いを怒らないでいてくれるようだ、嬉しくてアズロの首に回した腕に力が入る。
やがて窓から光が差し込み朝の訪れを感じさせた。
「…夜明けだ。」
セドニーの声に導かれてアズロも窓の外を見上げた。その時わずかに鼻の先がセドニーの鼻の先に触れる。
「あ、すまない。」
そう言って少し身を離したアズロを見送ってセドニーは自分の鼻先に触れた。
「なんか…私もヒョウになったみたいだね。」
さっきまでのキスとは違い、照れ臭そうに笑うセドニーは可愛いらしかった。そんなセドニーの反応に何かを感じたアズロは、少し考えたかと思うとさっき引いたばかりの身体を戻してまた口付けた。
この姿ではどうだろう、そんな試みがあったアズロは上目遣いでセドニーの様子を伺う。案の定赤くなったセドニーはなんとも言えない表情をしてアズロに目で訴えていた。
「あ、アズロって…実はちょっとエッチでしょ!」
精一杯の強がりでアズロに挑む、しかしその言葉の意味が分からないアズロはただ首を傾げただけだった。
「言葉の意味がよく分からないが…この姿の方が許してくれるという事は分かった。」
不敵に笑うその様子に反省の色は少しも混ざっていない事が分かる。さすがに拗ねたセドニーは部屋に戻ると宣言してぷりぷりしながらアズロの部屋を後にした。


