好きな場所


とくに話すこともないからどうしようとなっていると彼が続ける。

「さっき多分同じ映画観ていたと思うんですけど」

「え?」

同じ映画?どうゆうこと?

「ひとつ空けて隣の席に座ってたので覚えてて」

「あ、そうだったんですね」

隣には人はいなかったけどその隣の席には人がいたような気もするけど正直覚えていない。

「ごめんなさい、いきなり馴れ馴れしく」

私の反応が薄かったせいか申し訳なさそうに謝る彼に慌てて訂正する。

「いえ、そんな」

どうしよう…うまい言葉が浮かばない…

「良かったら少しお話しませんか?」

「え?…はい、いいですよ」

「よかった、ありがとうございます」

少し暗くなっていたのがほっとしたような顔になって今はニコニコしてて、ころころ変わる彼の表情が少し可愛く思えた。