喧嘩で煩かった音が静まり返る。
桃花はゆっくりと目を開けると、悠はナイフを男の顔スレスレの所で刃先を地面に付けていた。
男が脅えていることなんて気にも止めず、告げる。
「二度とアタシにその面を見せるな。次会うようなことがあれば、その時は本気で殺すぞ」
殺気を漂わせた悠の雰囲気に、男は震え上がる。
悠はゆっくり、跨っている男から男達へと視線を移した。
「お前達もだ。分かったら、さっさと失せろ。じゃないと、殺す」
男から離れると、地面に刺したナイフを手に持って言い放つ。
男達は悠に恐怖しこの場から逃げるように走って去っていく。
倒れていた男達も意識はあった為、傷を負っている箇所を抑えながら去っていった。
今、この場所に残っているのは悠と桃花に魅影、倒れている嘉耶と諒圭、龍黒の奴等に、一人の男。
「いやー、流石、最恐の鴉やな」
桃花の横に立っている男は、悠に恐怖する訳ではなく、凄いと関心をしていた。
「お前、殺されたいのか?」
「違う違う、本当に驚いてるんよ。ここまで実力があるとは思わんかったからね。俺、さっきの奴等の仲間じゃないけん、安心して。寧ろ、君の味方だよ」
ニッコリと笑って見せる博多弁を喋る男。悠は眉を動かし、八の字にしている。
「ハハッ、別に信用を得たい訳じゃないけん、気にせんといて。あ、妹ちゃんとそこの男の縄は切っといたけん」
よく見ると桃花の手足が自由になって、桃花は立ち上がっていた。
男はゆっくり悠に近づく。相手に喧嘩をする気がないのが見て取れた為、悠は構える事をしない。



