「お前の本命はどっちだ?アタシか?それとも龍黒か?」
問いの答えなど分かりきっている。一応の確認なのか、悠は電話の相手を見る。
「どっちもだ。お前も龍黒も目障りなんだよ」
「知るか。目障りなら態々回りくどいやり方せずに、自分等でどーにかすればいいだろ。アタシは逃げも隠れもしてないんだからな。出来ないのはお前が弱いからだろ?」
「テメェ、舐めた口聞きやがって!自分の妹がどうなってもいいのか!!」
怒りに満ちた顔で桃花の方へ近寄り、色白で艶やかな肌にナイフを当てる。触れているだけではあるが、いつ切られてもおかしくない状況。
悠は顔を顰める。その状況を作ってしまったのは紛れもなく悠自身なのだが、自分に向けられているはずの怒りを、他人にぶつけ脅してくる男の行動に怒りが湧く。
「桃花に傷を1つでも作ってみろ。お前達、全員生きて帰れると思うなよ?」
ここにいる殆どの男がビクリと震え上がっただろう。凛とし澄んだ声でありながら威圧感のある言葉。
まるでメデューサに睨まれたかのように動くことすら許されないといった空気に包まれる。
知ってか知らずか、分かってか分からずか、悠は言葉を続けた。
「目的はアタシ達だろ?殺したきゃアタシを殺せ。そしたら、お前等の不安要素は消える」
「悠ちゃん!!」
ナイフがすぐ近くにあることで恐怖を抱いている筈なのに、桃花はそれよりも悠の言葉に反応を示した。
“殺したきゃ殺せ”
自分の命など、どうでも良いと思っての言葉。悠は何も思っていないが、桃花は悠の過去を知っているからこそ、叫んだ。



