「……“死んでもいいわ”」



分かってる、これはただの定型文。

『月が綺麗ですね』に対するテンプレートな返信。

そのはずなのに、この胸の高鳴りは何?



「よくご存知で」

「なんで苦笑い?本心なのに」

「私は騙されませんよ」

「あーあ、すっかり警戒されてる」



本心だなんて、それは絶対嘘。

この人は甘い嘘を平気でつく。

舞い上がって期待させて、そしていつか裏切るんでしょう。

それを“怖い”と思うなんて、私もずいぶん相川くんに絆されてしまった。



「だって、この関係を壊したくないです」

「きいちゃんはこれ以上の進展は望まないわけ?」

「望みません、このままでいいです」

「このままでいいって、そんなこと言って俺に彼女ができたらどうすんの?」