でも、私には恋愛にうつつを抜かしてるヒマなんてない。

何せありがたいことに、仕事が盛りだくさん。

個人依頼のイラストと、出版社経由で依頼された小説の表紙と……やることがたくさん。

だけど、絵を描いてる間は無心になれるから正直助かる。



「きいちゃん」



時間を忘れて絵を描いていたら、不意に相川くんに肩を叩かれた。



「あれ、相川くん」

「ごめん集中してるのに。俺今から出かけてくるけどここにいていいから」

「あ……いってらっしゃい。お気をつけて」

「うん、ありがと」



出かけると言った相川くんはなぜか愛想笑い。

なぜか引っかかって相川くんの服の裾を掴んだ。



「あの、無理しないでくださいね」

「……きいちゃんすごいね」

「え?」

「俺の本心を見抜けるのは、後にも先にもきいちゃんだけだよ」