結局、璃子は足に異常はなくただの捻挫だった。
1週間後には練習を再開していたからひと安心。
その頃にはもう11月も半ば、さすがに美術準備室が寒くなってきて長居できなくなってきた。
物が多くてコンセントが埋もれてるからストーブも持ってこられないし。
「きいちゃん、ここ寒くね?」
それなのに相川くんはガタガタ震えながら私が絵を描いている様子を後ろで見守っている。
変な人、もう学校には来ないって言ったくせに。
「寒いなら出ていったらいかがでしょう。なんでいるんですか」
「えー、まだ怒ってんの?」
「怒ってませんけど、私は絶対絆されませんから」
「怒ってるじゃん、俺きいちゃんの笑った顔が好きだから笑ってよ」
「嫌です」
「あーあ、きいちゃんいじけちゃった」
ぶつかりあって以来、相川くんとは本音でぶつかれるようになった。
相川くんも素が出るようになったというか、遠慮がなくなった気がします。