「いらっしゃい、きいちゃん」



翌週の土曜日、相川くんの家にお邪魔した。

オートロックで真新しい、綺麗なマンションの10階。

そこが相川くんは住んでいるらしい。

玄関を開けると芳香剤のいい香りがして緊張した。



「お邪魔します、本日からお世話になります」

「相変わらず武士みたいに律儀〜。
あ、そのスリッパ履いていいよ」

「ありがとうございます……あ、猫ちゃん」



足元を見ると、可愛い猫のスリッパで少し和んだ。

しかし顔を上げると相川くんが私を凝視していて驚いた。



「さっそくずるくない?」

「何がですか?」

「きいちゃんの口から『猫ちゃん』なんて可愛い単語が出てくるとは思わなかった」



そんなつもりはなかったけど、そう言われるとイタズラ心が刺激される。

からかわれてばかりだから、たまには私だっていいですよね。