「きいちゃん、指先が紫になってんじゃん。可哀想だよこんなところで描くなんて」

「……家に父がいるから、仕方ないです」



相川くんはつまらない返答ばかりする私にしびれを切らして手を握ってきた。

……触れ合うことにずいぶん慣れてしまったと思う。

抵抗する気にならないのがその証拠。

ふと顔を上げると、相川くんの輝きを放つ目に囚われた。



「あのさ、提案なんだけど」

「なんですか?」

「俺の部屋使って絵描いてもいいよ」

「……は?」



目が逸らせなくてその提案とやらを聞かされることに。

しかし、信じられない言葉に首を傾げる。



「部屋ひとつ空いてるし、きいちゃんがよかったら。
見返りなんて求めないから、俺のこと使っていいよ」



それはつまり、無償で部屋を貸し出すってことですか?

なんのために?相川くんにはメリットがないじゃないですか。