「ごめんねきいちゃん、俺を正面から見てくれたのにあんなこと言って」
「そ、そんなこともういいですよ。私も事情を知らないくせに態度を悪くしてすみません」
「もう突き放したりしないから、俺のことちゃんと叱って」
これが仲直りのための作戦なら、相川くんは策士だ。
気が動転して許すしかなくなってしまう。
「っていうのを、電話で伝えようと思ってたけど会えてよかった」
「……命の恩人を叱ったりしませんよ、よほどのことがない限り」
「よほどのことって?」
「許可なく勝手にキスしたりすることです!」
分かってるくせに首をかしげてあざとく質問してきた。
恥ずかし紛れに大きな声で返答すると、相川くんは屈託のない笑顔を浮かべた。
もう、本当にこの人は何を考えてるんですか?
睨んだつもりが、あまりにもいい笑顔だったから影響されて私も笑ってしまっていた。



