大混乱の頭では抵抗すらできなくて、息を止めることしかできなかった。
唇が当たった一瞬がとてつもなく長く感じた。
「あれ、唇切れてる?血の味がした」
相川くんはキスしてきた後も普通に話しかけてきたけど、私は平常心には戻りきれず。
「わ、分かりません。そんなことより……なんで、したんですか?」
「お礼、何でもするって言ったから。あと俺が単にしたかった」
そうだとしても、キスしてくるなんて普通に思わないでしょう!
信じられない、ファーストキスだったのに!
「相川くんなんてやっぱり嫌いです!」
「あはは、怒っちゃった。でも気分紛れたろ?」
「紛れたどころか大混乱です。どうしてくれるんですか」
「あは、よかった。いつものきいちゃんだ」
怒って相川くんから離れようとしたのに、力が強すぎてビクともしない。
それどころか暴れる動物をなだめるかのように正面から抱きしめてきた。
一体全体、さっきから何してるんですか相川くん!



