「……よかった」



少し不安は残るけど、最悪の事態に陥らなくてよかった。

私は緊張の糸が切れてその場にしゃがみ込んだ。



「生きた心地がしなかった……」

「きいちゃん大丈夫?泣いてもいいよ」

「絶対泣きません」



大きな手で優しく頭をなでる相川くん。

優しい手つきなのに表情は少し意地悪。

……ひょっとして私が泣いた姿が見たいんですか?悪趣味ですね。

でも、助けてくれたことは確か。

だから自分の中で決めたことがあります。

もう相川くんの素性を、ネットや人づての噂で調べたりはしません。

相川くんがどんな人なのか、自分の目で確かめたいから。



「私はもう大丈夫なので、璃子が向かった病院に行きます。
どちらに向かったか分かりますか?」

「そんなに急がなくていいよ。もう少し俺と話そ」

「でも、璃子の足が心配で……」



立ち上がったら相川くんはしゃがんだまま私の腕を握った。

あ……少しさみしそうな目。

ケンカした時、去り際に見た目とよく似ている。