『きいちゃん、あのさ……この前のことなんだけど』

「助けてください、相川くん」

『……は?』



すぐに画面をタップして電話に応じて、自分の要望だけ伝えた。

相川くんに助けを求めたって意味は無い。



「男の人に追いかけられて、公園に隠れたんですけれど身動きが取れなくて。
璃子も一緒なんです、助けてください」



分かっているのに相川くんを困らせてしまう。

こんなこと言ったって危険に巻き込むだけだ。

早く警察に連絡しないと。



『すぐ行くから、電話繋げたままにできる?あと現在地教えて』

「え……はい」

『大丈夫だから、絶対そこから動かないで』



電話を切ろうとしたのに、相川くんは切るなと言ってそれっきり。

スマホのスピーカーからは何やら物音が聞こえてくる。

璃子は私の後ろで震えていて、少しでも不安を和らげようと手をぎゅっと握った。