「何すんだてめえ!」

「……いってえな、ふざけんなよ!」



走り出して数秒後、背後から男の声と足音が近づいてきた。

……追いかけてきた!

恐怖で心臓がギュッと掴まれた感覚がして脚がもつれそうになる。

だけど大丈夫、これだけ暗くて入り組んだ道なら簡単に闇に紛れられる。

だけど人通りが多い場所までは遠い。交番まではもっと距離がある。

どうしよう、私がしっかりしないと。



「お姉ちゃん、待って……足が」



手を引いて走っていた璃子の腕がガクンと揺れたかと思うと、スピードが急に落ちる。

振り返ると璃子が苦しそうな顔をして、片足をかばうように歩き出した。

……もしかしてヒールを履いてたから足をくじいた?