「今日、文化祭だよね。ここで何してんの?」
「私は仕事を終えましたので、こちらで制作をしています」
「仕事……?絵描いてるってことはもしかして、校門にあったあのでっかい看板描いたの!?すげーじゃん」
「ありがとうございます……」
さらに距離を縮めて後ろから顔をのぞき込まれた。
見慣れない笑顔と爽やかな香りに心臓が高鳴る。
懐っこい人だけど、調子を狂わされて変な感じ。
「ねえねえ、名前は?」
「……滝本稀子と申します」
「キコちゃん……可愛い名前」
私に興味を持った彼は笑顔で名前を聞いてきた。
……可愛い名前、なんて異性には初めて言われた。
落ち着いて私、これはただの社交辞令だから。



