「ね、不思議ちゃんでしょ。俺のお気に入りなの」
「不思議ってより、武士っぽい」
「あー、そうかも。律儀だし」
丁寧に挨拶したら武士と呼ばれてしまった。
だけど馬鹿にされてる感じじゃないから嫌な気分にはならない。
すると相川くんは私に近づいて、ぐいっと肩を抱き寄せてきた。
は?急に何するんですか。
相川くんの香水の匂いが鼻腔をくすぐって心拍数が上がる。
「ねえきいちゃん、俺ら逆ナンされてばっかでダルいから一緒に歩いてよ」
「……逆ナン?」
なるほど、これはスキンシップではなく、女性に声をかけられないためのカモフラージュらしい。
というか、銀座でも逆ナンされるんですね。
確かにお友達のカイさんも長身で系統は違うけど整った顔立ちをされているので、二人揃うと圧倒的に目立ってる。
「どこに行くんですか?」
「とりあえず銀座抜けるまで」
しかし、相川くん最近距離近くないですか?
会った時からこんな感じでしたっけ。



