彼女の唇に乗って私の耳に届けられた言葉。

理解するのに数秒かかった。

だって刹那の話が突拍子もなく出てきたから。



「……へ?」

「あの子、会う度にいつも言うの。きいちゃんに会ってから世界が変わったって」

「あの、もしかして……」

「偽名を使ってごめんなさい。私の本名は荒瀬壱華と申します」



優雅にお辞儀をされたのでそれに合わせる。

そしてその体制のまま考えた。

イチカ……もしかして漢字は“壱華”でしょうか。

“壱輪の華”って、そういうことだったんですね。



「ふふ、構図も素敵。志勇絶対喜ぶ」



……ということはつまり、目の前で笑顔を見せる彼女は荒瀬組の姐さん!?

そして刹那のお母さま!?

待ってください、どう考えても30代前半にしか見えないんですが!?