「“きいちゃん”?」

「俺が絵買った子。ほら、片隅にkicoって描いてあったろ」

「あの玄関に飾ってる絵?てっきりもっと年配の画家が描いたとばかり……」

「はあ?じゃあ、しわくちゃのばあちゃんに“きいちゃん”ってあだ名つけてたと思ってたのかよ」

「刹那ならやりそうだな、と」



その通り私は『kico』という名前で活動しているけれど、相川くんその人に見せたんですか?

目を見開いて私を観察するその人。

どうやら相川くんは私の絵を紹介してくれたみたい。照れくさいけど嬉しい。



「はあ、まあいいけど。
きいちゃん、こいつは(かい)、大学が一緒なんだ」

「お初にお目にかかります。滝本稀子と申します」



私の絵を褒めてくれた人なら、と深々と頭を下げて挨拶する。

するとカイさんに少し驚いたような顔をされた。