「ご家族の誰かが俳優だったりします?」

「あは、そんなところ」



試しに質問してみたけれど絶対違いますね。

やっぱり相川くんのことはよく分かりません。

それなのに一緒にいる時間が心地いいと思ってしまうものだから恐ろしく感じる。

相川くんとの間には見えない壁があるのに。

越えることの許されない壁が。

その壁を無理に越えようものなら、この曖昧な関係は終わってしまう気がする。



「でも確かに、親戚一同俳優ばりに顔がいいよ」

「……それはぜひ描かせていただきたいですね」

「あは、きいちゃんって普通じゃないよね。着眼点が違っておもしれー」



そんな気がするのに、相川くんは抗えない魅力を振りまいてその感覚を麻痺させようとする。

まったく、罪な人たらしだ。