応答を拒否、の部分を指先でタップする。



「え、大丈夫なんですか?」

「後で彼女といて手が離せなかったって言っておく」

「でも、大事な電話なんじゃ……」

「雅狼も女にうつつを抜かす役立たずになったと思わせておけば、もうかけて来ねえかも」

「ガロウ……?」

「組の連中が勝手に呼んでる俺のあだ名。
ちなみに絆は『白狼』、永遠は『狼姫』。で、俺は雅狼って呼ばれてる」



兄弟で通り名があるなんてかっこよすぎる。

確かに名前を呼ぶのをためらうくらい美しい兄弟だから納得できる。

だけど淡々と語る刹那は、らしくない弱々しい笑顔を浮かべてる。

……ああ、そういことですか。



「……よくかかってくる電話って、荒瀬組の人からなんですか?」

「当たり、この際だからきいちゃんには全部話そうと思う」



そんな気はしていた。

なんでもこなす刹那の頭を悩ませる問題なんて、それくらいしか思いつかなかったから。

私は作業している手を止めて向き合った。