「稀子、悪かった」

「……はい?」



構えていたのに、予想していた叱責はなかった。

むしろ申し訳なさそうな声がして驚いた。



「あの後、璃子や母さんから全部聞いた」

「何を?」

「稀子がどれだけ努力して、どんなに頑張ってるか……。
何も知らず偉そうなことを言ってすまなかった」



……こんなことは初めてです。

どうしていいか分からず私は立ち尽くした。

プライドの高い父が私に謝ってるなんて。

これは夢?それとも私の妄想?



「いえ、私も……言いすぎました。ごめんなさい」

「……一緒にいると気まずいだろうから出かけてくる」



動揺しながら謝ると、父は私とすれ違って家を出ていった。

……え、何があったの?絶対怒られると思ったのに。