「え、お姉ちゃん?」

「稀子、どうしたの……」



その時、買い物に行っていたお母さんと璃子が帰ってきてリビングに入ってきた。

父は2人が帰ってきたことに動揺したけど、私は構わず続けた。



「夢を追いかけることがそんなに愚かですか?
がむしゃらに頑張る人たちを批判ばかりして楽しいですか?」

「そんなつもりで言ったんじゃない」

「だったら何も知らないくせに否定しないで!」



お父さんは狼狽えて目を逸らす。

一方的に睨みつける私を見て、璃子がそっと近づいてきて私の腕を掴んだ。



「……落ち着いて」



少し震えた璃子の声。

……私はいつも璃子を不安にさせてばかり。

不甲斐ないけど、怒りが収まらなくて冷静になれない。

このままじゃまた衝突する。一旦頭を冷やすべきだとリビングに出た。



「お姉ちゃん!」

「璃子、大丈夫だから」

「でも……」

「今までかばってくれてたのにごめん」



追いかけてきた璃子に笑いかけて玄関の扉を閉める。

1月も終わりかけの寒い冬の日。

私はスマホだけ持って、人生で初めて家出をした。