「縁切ったって言っても、父さんとは割と普通に会うよ」

「え……それ、私に言っていいんですか?」

「きいちゃんは信用できるから大丈夫」



かと思えば、とんでもない暴露をされた。

縁を切ったのに会って大丈夫なんですか?



「世間に縁を切ったって証拠を示すために名前変えただけ。俺たち家族は何も変わらない」



何も変わらない、と笑顔で宣言した刹那くん。

この時、“荒瀬家”がいかに強固な絆で結ばれているかを痛感した。

家族にも後ろめたいことがある私にとっては、眩しくて胸の奥がズキンと痛かった。



「もちろん公的に縁を切った以上、きいちゃんを巻き込んだりはしないから。それは誓う」

「……信じます、刹那くんのこと」

「ありがときいちゃん」



信じると目を見つめて伝えたら優しく抱きしめてくれた。

刹那くんの秘密を共有した日。

その日は凍えるように寒かったけど、誰にも見せてくれなかった部分に触れて、心はあたたかかった。