「刹那くん!」

「お早い到着だな」



そっちに行こうとしたのに、絆さんは私の肩を掴んで、なぜか私の髪に指を絡める。

あれ……なんで刹那くんのこと挑発してるんですか?

顔を上げた刹那くんがそれを見た瞬間、目の色を変えてわずかな距離を走ってきた。



「絆、きいちゃんにだけは手ぇ出すな!」

「遅ぇな、鈍ってんじゃねえの」



嫌な予感がすると思ったら、刹那くんは本当に拳を振り上げた。

ためらいなく殴りかかったけど、絆さんはそれをいとも簡単に受け止めた。

遅い?鈍った?え、全く攻撃が見えませんでしたけど。

まったく状況が掴めないまま、いつの間にか刹那くんの胸の中にいた。



「絆、何のつもりだよ。お前のにおいがきいちゃんにうつって最悪なんだけど」

「は?俺に誘われて簡単になびく女なんか嫌だろ。試してやったんだよ」

「ふざけんなよ、何がしてえんだよ」

「仕返しに決まってんだろ、散々琥珀(こはく)にちょっかいかけてたくせに、自分のこと棚に上げんな」



コハク、という名称を聞くと刹那くんはピクっと反応した。

……あ、覚えがあるみたいですね。