「あいつそんなこと言ったのか?」

「いえ、家族の話をする刹那くんはいつも楽しそうな顔をしてたから」

「ふーん……」



絆さんは腕を組みながらさらに顔を接近させてくる。

命の恩人なのに、命の危機を感じて後ずさった。

しかし後ろの壁にぶつかってしまい逃げ場を失くした。

だから、なんで刹那くんの周りの人はみんな距離が近いんですか!



「にしても刹那が目をつけるだけあって可愛いな、何歳?」

「か、可愛い!?いや、その……17歳なので私に手を出すと犯罪ですよ!」

「あっはは……」



大慌てでどうにか遠ざけようとしたら、絆さんは白い歯を見せて笑いだした。



「な、なんですか?」

「いや、冷静そうに見えてテンパると声張り上げんの、俺の女にちょっと似てて笑った」

「俺の女……」



何も状況が掴めてないけど、絆さんには彼女がいるらしいのは分かった。

きっと言うまでもなく、絶世の美女でしょうね。

と、その時カランとドアチャイムが揺れる音がした。

そっちに目を移すと、中腰になって肩で息をする刹那くんの姿を見かけた。