「もう大丈夫、こっちおいで」



手招きするその人は、優しく微笑んで私を店の中に呼び込む。

なぜかためらうことも出来ず、言葉に従って素直にお店の中に足を踏み込んだ。



「危なかったな。刹那はあと5分くらいでこっちに来るから安心して」

「えっと……ご親切にありがとうございます」

「いいよ、一度会ってみたかったから」



お店の中はバーのような内装。

まだ早いから開店前みたい。

そんなことより、私を助けてくれた人のことが気になる。

どこか闇を抱えてそれでも輝きを保つ瞳。

その目には見覚えがある。



「……もしかして、刹那くんのお兄さんですか?」



思い切って聞くと「正解」と微笑みながら答えてくれた。



「うっ……」

「大丈夫?やっぱりどっか怪我してる?」

「だ、大丈夫です、本当に大丈夫なので……」



え、何?この胸の高鳴り。私は刹那くん一筋なのに、心臓を掴まれたみたいに苦しい。

加えてとんでもない色気に失神しそう。

こんなカッコイイ人が刹那くんのお兄さん……?

荒瀬家の遺伝子、いったいどうなってるんですか。

美形揃いで心臓が持ちません!