「ここが荒瀬組のシマと知っての狼藉か?」



荒瀬組、そうはっきり口にすると、男はハッと目を見開いて私を乱暴に突き飛ばした。



「お前……っ!」

「誰に対してお前なんて言ってんだ、あぁ?」



店の中から現れたその人は、目にも止まらぬ速さで男の顔を鷲掴みにして睨みを効かせた。



「……あ、うぁ……!」



私を追いかけてきた男は、言葉にならないみっともない声を上げると一目散に逃げていった。

……助かったんでしょうか。

いろいろ現実味がなさすぎて思考が追いつかない。

だけど震える自分の手を見ると、これは現実なんだとひしひし感じる。



「なぁんだ、大したことねえな」



逃げる男の背中を見て呟く黒髪の人。

冷静になるとますます意味が分からない。

いったいなんですか、この色気の権化のような男性は。

こんな綺麗な男の人初めて見ました。