「戸籍を変えたってことですか?」

「いや、親子の縁は法律上切れないからそのまま。だけど関係がないって周囲に分かるように母さんの旧名の相川を名乗ってる」



淡々と語ってるけど、そこまでに至る苦労を想像して胸が痛くなる。

生まれ育った家と縁を切るなんて、そんな簡単な話じゃない。

名字を変えることだって、確か裁判所経由じゃないと承認されないはず……。



「『刹那』は変えないんですね」

「意外と気に入ってんの、この名前。珍しいからすぐ覚えられるし」

「……好きなんですね、家族のこと」

「あれ、バレた?」

「だって優しい顔してる」



その苦労をしても尚、刹那くんは家族のことが好きなんだ。

私は家族を語る時、そんな楽しそうな顔できない。

だから素敵な人たちなんでしょうね。

永遠さん以外の刹那くんの家族にも、会えることなら会ってみたいな。

きっと不可能に近いけれど。